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そんなカリンをよそに、ラウはいつもの調子を取り戻したらしく、先程までより少しだけ崩した話し方で言う。
「で、カリン。_此処には、監視とかもついていないようだし、こっちの話し方でいいか?」
これが、彼の素の話し方である。
「...はい。部屋に来客が来た時以外なら...」
それに対して、カリンは先程から何も違わない丁寧な口調で返す。此方は、これが素である。主と従者の関係にしては少し逆な気もするが、これがこの二人にとってのフツウなのである。
「良かった。長時間、あんな堅苦しい言葉遣いとか気が滅入るところだったよ。あの王妃は、今日もカリンに何かと突っかかってくるし...」
カリンの返答を聞き、ラウはブツブツと文句を言う。本来ならば、此処でカリンがラウを窘めなければいけないのであろう。
(ですが、私にはこのことについてラウちゃんを責める資格などありません)
_こうなってしまったのは、私のせいなのですから、そう心の中で思うカリン。すると、今まで一人でブツブツと何事か呟いていたラウが唐突に、何かを察したらしく真剣な表情で言う。
「それは、違う。これは、俺とカリンの二人で決めたことだろ」
まるで、カリンの心の中を読んだかのように言う、ラウの優しさに何だか嬉しくなったような気がする。
(私にまだ感情があったなら、きっとこれを嬉しいと言ったのでしょうね...)
でも、もうそれを言うことは叶わないから、
「...ラウちゃん、ありがとう」
この言葉を貴方に贈ろう。
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