第二章 「あの日の誓い 中編」

10/11
前へ
/235ページ
次へ
 そんなカリンをよそに、ラウはいつもの調子を取り戻したらしく、先程までより少しだけ崩した話し方で言う。 「で、カリン。_此処には、監視とかもついていないようだし、こっちの話し方でいいか?」 これが、彼の素の話し方である。 「...はい。部屋に来客が来た時以外なら...」 それに対して、カリンは先程から何も違わない丁寧な口調で返す。此方は、これが素である。主と従者の関係にしては少し逆な気もするが、これがこの二人にとってのフツウなのである。 「良かった。長時間、あんな堅苦しい言葉遣いとか気が滅入るところだったよ。あの王妃は、今日もカリンに何かと突っかかってくるし...」 カリンの返答を聞き、ラウはブツブツと文句を言う。本来ならば、此処でカリンがラウを窘めなければいけないのであろう。 (ですが、私にはこのことについてラウちゃんを責める資格などありません) _こうなってしまったのは、私のせいなのですから、そう心の中で思うカリン。すると、今まで一人でブツブツと何事か呟いていたラウが唐突に、何かを察したらしく真剣な表情で言う。 「それは、違う。これは、俺とカリンの二人で決めたことだろ」 まるで、カリンの心の中を読んだかのように言う、ラウの優しさに何だか嬉しくなったような気がする。 (私にまだ感情があったなら、きっとこれを嬉しいと言ったのでしょうね...) でも、もうそれを言うことは叶わないから、 「...ラウちゃん、ありがとう」 この言葉を貴方に贈ろう。
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加