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「...ねえ、お兄様。今日、闇の国で大きなシキテン?があるんですって。一緒に行きましょ」
その日は、妹の様子がおかしかった。普段、私とあまり会話をしたがらない彼女が私に話しかけてきたからだ。そして私も、何故だかはわからないが、不思議といつものように彼女の誘いを断ろうとは思わなかった。
思えば、この選択こそが全ての始まりだった。
﹢ ﹢ ﹢ ﹢ ﹢ ﹢ ﹢ ﹢ ﹢ ﹢
ゴオォォ...
全てを呑み込む真っ黒な焔が、城を人々を黒く、黑く、くろく、染め上げていく。黒い焔に追われながらも人々は懸命に走り、あの異色の焔から遠ざかろうとする。彼らの本能が逃げろと告げているからだ。だが一人、また一人と逃げる者たちの数は、焔に呑まれ減っていく。
(何故、こんなことに...)
理由はわからないが城で何かがあったのだろう。式典の最中、いきなり城から誰かの悲鳴が聞こえてきて、その数秒後、あの黒い焔が城全体を呑み込んだのだから___。
「...お兄様、あの黒い焔は一体......?」
隣にいる妹が、驚きと不安の入り混じった声で尋ねてくる。だが、問われたところで私にもわからない。あのような色の焔は見たことがないからだ。
「残念だが、私にもあの焔の正体はわからない。だが、あれに呑み込まれたらまずそうだ。...取りあえず、この国を出よう」
私がそう提案すると案の定、妹は驚いた表情を浮かべていた。そして、その表情のまま私に問いかけようとする。
「お兄様、まさか_____ 」
「いや、これは...私自身が考えて出した結論だ」
私は妹の発言に重ねるように言う。
「あっ...ご、ごめんなさい。お兄様、今のは失言でした」
妹はしまったというように口元を押さえ謝る。私はそれに、気にしなくていいと返し、その後、早くこの国から出ようともう一度言った。
その時、妹の目が本当は気にしてるくせに、と私のことを咎めるように見ていたのには気が付かなかったフリをした。
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