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「...............」
妹は少しの間、私のことを見つめていたが、やがて諦めたのか視線をそらして何も言わずに正門がある東側へと歩き出す。
(そう、あなたには視えたのね...)
私も、心の中だけでそう呟いて歩き出す。どちらも何も言わない、ただ二人の歩く音が聞こえるだけの時間。いつもと同じ光景に私は安堵を覚える。そして、それと同時にこのままではいけないとも思う。
「少しスピードを上げようか」
後ろに迫ってくる焔を見ながら、私は自身の少し先を行く妹に問いかける。だが彼女からは肯定も否定も返ってこない。その代わりに、前を行く妹のスピードが少し上がった。きっと、先程のことをまだ気にしているのだろう。そして彼女は、こういう時にどうしたらいいかが分からないのだ。
...もし私たちが昔のようにいることができたなら、この答えを見つけることができたのだろうか。だが、それは、気づいたときにはもう手遅れだったのだ。だから、しょうがない。そう自分に言い聞かせることしか、私たちにはできないのだ。
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