第一章 「あの日の誓い 前編」

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「そうですね。だって、城をこの黒い焔が呑み込んでからまだそんなに経っていないもの。貴族なら、今日は城に呼ばれているはずだから、この短時間でここまで来るには少し無理があるわ。...ましてや、自分の足で走ってここまで来るなんて」  妹が、そう決定的と思える発言をする。 「だが、それは、の話だろう」 それに対し私は、妹の意見を真っ向から否定する。彼女はそれを聞き、口元に笑みを浮かべた。 「その通りです、お兄様」 妹は心底嬉しそうに言う。きっと、彼女は私を試していたか何かなのだろう。妹と私では出来が違う。彼女は、私よりも遙か先のことを知っているのだ。 「あの子は、明らかに普通じゃないもの。だって、あの子私たちと同じ気がするの」 そう、妹は続けて言った。 (私たちと同じ...か) 妹が言った同じという言葉。きっと、深い意味はなく使ったのだろう。だが私にとっては妹と同じ、と彼女に言われることがどうしようもなく辛かった。私たち二人は、何もかもが違うというのに___。 「...様、お......様。.........お兄様!」  妹が私を呼ぶ声が聞こえ、私は自身の意識を思考の渦の中から現実へと戻す。どうやら、随分と長い間考え込んでいたらしい。妹が私を心配そうに見つめていた。 「すまない、少し考え事をしていてね。それより、どうかしたのかい?」 私が話し出すと、妹が少しだけホッとした顔をする。その後彼女は後方の焔を振り返り、らしくない真剣な表情を覗かせて言う。 「ここにもだいぶ、焔が迫ってきています。早く逃げましょう、お兄様」 私も妹に倣って、後ろを見ると確かに黒い焔が迫ってきていた。私たちは、一も二もなく城の東へと走り出した。
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