第一章 「あの日の誓い 前編」

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「はぁ...。流石に、城の外まで来れば大丈夫だろう」  ここまで来るのに体力を使い、疲労が完全には隠しきれない私の横で、妹は息を一つも乱さぬまま闇の国が黒い焔に呑まれていくさまを見つめている。この光景を見て、彼女は何を考えているのだろうか。一体何を思っているのだろうか。少し乱れた息を整えながら、私も妹と同じ方をぼうっと眺める。 「......!」 すると突然、不思議な光が国の正門近くで見える。一体、何の光だろうか。魔法とは、何かが違うような...。そうこうしていると謎の光が消え、それのあった辺りから人影が空へと跳び上がる様子が見える。 「お兄様。あの子、さっきの子だわ」  ずっと無言を貫いていた妹が不意に言う。確かによく見てみると、私たちが普通じゃないと言っていたあのエルフの少女がいる。少女は手に、先程まではなかったはずの大きな剣を携えている。その剣は強い魔力を持っていると、遠目からでも感じ取ることができた。そして少女は驚いたことに空中で剣を振りかぶり、正面の黒い焔を目掛けて一気に振り下ろしたのだ。 「「...なっ!?」」 あり得ない光景に、私と妹は一斉に声を上げる。剣を焔目掛けて振り下ろしたこともそうだが、こともあろうか少女の剣はあの焔を切り裂いたのだ。
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