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人工的に造られたその川に、毎日のように足を運ぶ少女の言い伝えがあった。その少女は両方の目が見えず、音を頼りに生きていたらしい。それゆえか、好奇心が人一倍旺盛だったようだ。
ザーザーと雨音のような音を立てながら流れる川に、彼女は強く惹かれたのだろう。そよ風に揺れるカーテンのように、少女の腰ほどまでしかなかった柵をいとも簡単に越えてしまったのだ。
川の中は、どれほど冷たく、暗く、孤独だっただろう。
それ以来、その川の流れる音は彼女の慟哭を表しているといわれるようになった。
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