シャープペンシル

2/8
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 中学校で鉛筆をつかう子は異質な存在で、変わった子という枠に入れられる。仲良しの友達とは変わらないけどカーストは下がって、たまに当てこすりみたいなことを言われたりもする。それでもほかの部分でうまくやっていれば最下位まで落ちることはない。ハブられるほどじゃない。  鉛筆をつかう子はほかにも何人かいて、私はその人たちを心の中で「鉛筆組」と呼んでいた。「鉛筆組」は大抵カースト最下位だった。真面目ちゃん、根暗、そんなレッテルがペタペタと張り付けられている。  隣の席の浅野くんも「鉛筆組」の一人。浅野くんは休み時間に本を読むようなおとなしい男子で、その上鉛筆をつかっているのが根暗というイメージに拍車をかけている。浅野くんは馬鹿にしてもいい存在で、彼に投げつけられるいろんな言葉を私は隣で聞いていた。かわいそうだとは思わない、彼はきっと憐憫れんびんなんて求めていないから。ただ、それが私ではなく彼に向くことに少しばかりの罪悪感があった。それは私が彼を利用しているのが原因だから。  浅野くんは抜けていて、いつも鉛筆削りを忘れてくる。そして私はこれみよがしに彼にそれを貸してあげる。根暗で間抜けな彼にものを貸す私は、その行為でお人よしのイメージを手に入れていた。私は「鉛筆組」のマイナスをカバーするのに彼を利用していて、それは我ながらずるいやり方だと思ったけど、忘れ物をするのを助けてあげてるんだからwin-winだよねと言い訳する。それに「鉛筆組」が嫌ならシャーペンをつかえばいいんだ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!