シャープペンシル

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シャープペンシル

 中学生になると学校でシャープペンシルをつかってもよくなる。  小学校では鉛筆じゃないとだめだった。だからシャープペンシルは、もう子どもっぽい小学生じゃないんだと実感できる象徴的なアイテムで、中学校にあがるとみんなか鉛筆をやめてシャーペンをつかう。私たちはもう中学生のお姉さんになったんだって気分にさせてくれる。  シャーペンには鉛筆と違っていろんなデザインのものがある。かわいいキャラクターもの、ラメの入ったもの、機能性重視の武骨なもの。おしゃれをしたい盛りの私たちにとって、シャーペンは個性を表すためのファッションアイテムでもある。でも好きなものを選ぶわけじゃない。あざとい女子はかわいいものをつかって男子に媚びる。カースト上位の女子より派手なものはつかわない。シャーペンはコミュニケーションツールでもあった。  私も、中学校に入るとシャープペンシルを買った。私のキャラに派手なものは似合わないから、シンプルだけど少しかわいいものを。  だけど私は今、鉛筆をつかっている。シャープペンシルはうまくつかえなかったから。芯を出しすぎてしまってポキポキと折れるし、少ししか出さないとすぐに減ってしまって何度もカチカチと押し出さないといけない。  それに、シャープペンシルはなんだか楽しくない。鉛筆をつかっていると芯がすり減って文字に変わるのを手で感じられて、それがなんだか勉強してるって感じがする。鉛筆が短くなるとその分だけ鉛筆の芯が文字に変わったんだと思えて、それが好きだった。シャーペンだって同じはずだけど、なくなった芯がノートの文字に変わった感じはしなかった。  だから、シャープペンシルは子どもっぽい小学生から垢抜けられるアイテムかもしれないけど、私は鉛筆をつかうことにした。つかいやすいと思わないのに大人ぶるためにつかうほうがよっぽど子どもっぽい。私はそんなに安直じゃないから、周りの目を気にせずジブの気に入ったものをつかうんですって大人のポーズ。わざわざそんな言い訳を用意してしまうのが周りの目を気にしてるってことだけど。
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