僕たちの秘密

8/8
81人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「奏斗」 奏斗は何も喋らない。 いつだってそうだ。 「誠二」 絞り出すような声で奏斗が喋る。 「何」 「好き…誠二…」 「奏斗…」 奏斗の口から初めて「好き」と聞いた。 僕は思わず奏斗を抱きしめる。 「誠二、ダメ」 奏斗は僕を押しやった。 「なんで?」 「人が見てる」 「じゃあ帰ろう?」 「うん」 マンションに戻ると僕は玄関口で奏斗に口付けた。 酸素も全部、奪っちゃうくらいに。 唇を離した奏斗の顔が紅潮している。 「奏斗も僕の事、好き?」 コクリと奏斗が頷く。 「男同士でも?」 コクリと奏斗が頷く。 「じゃあ出ていくのはやめる?」 「誠二と…いる」 相変わらず言葉が少ない奏斗に僕は微笑む。 「じゃあ、秘密にしよ?」 キョトンと奏斗が僕を見つめる。 「僕たちの関係は永遠に秘密。今も、これからも、ずっと。それでいい?」 「いい」 僕はまた奏斗に口付ける。 今度はもっと、深く深く。 この煉瓦造りのマンションで、僕たちはずっと秘密を共有していく。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!