僕たちの秘密

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僕は最近ずっと悩んでいる。 ここは茶色の煉瓦造りに蔦が絡まるレトロな雰囲気のマンション「アルファ・ビルヂング」 僕はこのマンションをとても気に入っている。 レトロな外観もそうだが、すべてを包み込んでくれるような温もりも。 だから、ここで僕たちは同棲生活を始めた。 僕たちは男女じゃない。 僕も奏斗(かなと)も男だ。 男同士の、友達の同居生活という体を装っている。 管理人のヒロさんだけが僕たちのことを理解してくれて、何かと気遣ってくれる。 時には美味しい手作りのスイーツを差し入れしてくれたりなんかする。 奏斗は甘いものに目がないからあっという間にヒロさんの虜になった。 だから僕はこのマンションが大好きだ。 それなのに僕は悩んでいる。 奏斗とは高校の時に知り合った。 始めは友達だった。 でも友達じゃなくなっていった。 僕は奏斗のことを友達だと見られなくなっていったからだ。 完全に性の対象になっていた。 その想いを伝えると奏斗は黙って頷いた。 それから大学に入って。 二人でここで生活を始めた。 奏斗は僕に初めて抱かれる時も黙って頷いた。 そのことに僕は苛立っていた。 僕のことを好きだとも嫌いだとも言わない奏斗に。 奏斗は僕のことをどう思っているんだろう。 一度訊いたことがある。 「僕の事、好き?」って。 でも無言だった。 無言で顔を伏せた。 その行動に僕はまた苛立った。
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