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テーブルにはたくさんの三日月が並びました。胃袋を鍛えれば大食い選手権に出られるかもしれない。テレビ映りのために今から食べ方がきれいに見えるように工夫してみようか、と考えていると、調理を終えた熊が厨房から出てきて、私の向かいのいすに座り、こちらをじっと眺めています。テーブルに頬杖をついて、小首をかしげて私がぎょうざを食べるさまを眺めているのです。
「熊さんは、いや、あなたはどうしてここで働いているんですか」
ふた皿目に箸をつける私に熊は答えました。
「ここで友達が働いていたのを、僕が代わったのです。彼は雇われ店長で、ここの厨房とホールをすべて一人で取り仕切っていました。オーナーは県北で山を持っている地主さんで、この店にあまり顔を出しません。だからといって僕は手を抜いて怠けたりしません」
熊はその毛に覆われた厚い胸板をぐい、と張りました。
「お友達はどうしたんですか?」
「国のお母さんが病気で帰国しました」
「お友達は、どこの人ですか?」
「タイです」
「タイの熊さんですか?」
「いいえ、人間です」
どうして熊と人間が友達になれるかという疑問は、今ここで私が彼と話をしていることを考えると愚問であるように思われました。
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