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このままだと鼻と耳が押しつぶされてしまう。恐怖で背筋がこわばり、汗が脇の下から流れてきました。膝ががくがくと震え、目は開けているのに、頭の中がぼうっとしているので、霞がかったように周りがぼんやり見えます。
口だけ金魚のようにぱくぱく動かして、歩く力も尽き果ててその場に膝をつきました。夜中過ぎの冷たい地面のざらざらした感触が通勤着のズボンから伝わってきます。いっそこのまま気を失えば楽になれるかもしれません。
道に横たわった私は体の力を抜いて、目を閉じました。全身に夜の冷たい道路の感触が伝わってきます。
すると、今までひくひくと鼻や耳を圧迫していたものが、ふっと力を抜いたように消えました。まだ朦朧とする意識の中で、ようやく薄目を開けることができました。
ぼんやりする視界には、さっき食べたばかりのぎょうざが四つ、落ちているのが映っています。
両方の鼻の穴と、両耳から絞り出されたのでしょう。胃が異物を吐き出したあとの痙攣と、鼻腔と耳の細い管を無理に大きいものが押し通った後の痺れを感じながらも、それらを押し出して楽になった私は、ぎょうざに歯形がついていないのを確認するとほっとして、ほかに何体ものぎょうざが胃の中におさまったままであるかかわらず、とりあえず無事に戻ってきた四体のぎょうざを眺めると急に力が抜けて、
「ああ、無事でよかった」
と、その場でぐっすり眠りこんでしまいました。
その後、時々街中で倒れている人を見かけることがあります。
彼らの顔のそばには、必ず四つの白い三日月が転がっています。
ああ、私と同じだ、と思うと、苦悶を耐え抜き、そして安堵の微笑をにじませて倒れている姿がいじらしく思えて、彼らに何事もないよう、そっとまたいで通り過ぎることにしています。
時々あの店の近くを通るのですが、長年の営業で風格を増した店構えはそのままで、そしてときおり客が店に入るときに開けたドアの隙間から、こげ茶色のむくむくの毛がさっと見えたりするのです。
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