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「運命だねって近寄って来る男は危ないヤツだと思うわ」
茜が恋愛ドラマの男女に文句を言った。
「また、ツッコミ入れてるの? ほら、サラミでも食べて落ち着きなよ」
「サラミは拓海が好きなんでしょ。食べるけど」
爪楊枝の刺さったサラミに手を伸ばした。
「ドラマなんだから男女が出会わないと話にならないじゃないか」
「そうなんだけど。もっと自然な出会い方ってもんがあるでしょ」
「いやいや、これコメディ要素強いしさ」
茜がぶつくさ言いながら見ているテレビドラマは、いつもヒロインがトラブルに巻き込まれ、捕まる寸前で颯爽と弁護士である主人公がヒーローのごとく現れるというミステリー仕立ての恋愛ドラマだ。設定がすでに不自然極まりない。
「謎解き部分は面白いよ。でもこれ、恋愛要素いる? 毎回毎回、ヒロインが運命の人だって騒ぐのもわざとらしいし」
「そう? それが可愛いんじゃないの?」
「はあ?」
あざといと同性にはいまいち不人気な若手女優の演技にイライラしているようだ。
「いや、ほら、弁護士役の俳優も格好いいよ」
茜がふんと鼻を鳴らした。
「……ビール、もう一杯飲もうっと」
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