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茜は『運命的な出会い』を毛嫌いしていた。
何故かと問うと、占い好きの親友のせいだと言う。
「良いけど、飲みすぎないでね。明日は車で買い物に行くって約束したでしょ」
「そこまで飲まないよ」
缶ビールをグラスに注ぐ僕をちらりと見て、サラミをもう一口食べた。いつの間にか自分の好物が相手の好物にもなるんだなと、サラミを摘む茜を見て思った。
「全部食べちゃうよ?」
「食べるって」
こぼれそうなビールの泡を啜りながら隣に座った。
「そういえば、これ原作の小説があるんだって。明日、本屋にも行って良い?」
「何だ、茜。ハマってんじゃん」
「だから、ミステリーとしては面白いんだって!」
茜は学生時代は本が好きなあまり、勉強よりも熱心に本屋でアルバイトしていたらしい。本嫌いの僕が、毎週の様に本屋に行くようになったのは当時、アルバイト店員だった茜目当てだったのだが、僕にとってはそれは運命の出会いだと思っている。
「そうだ、私がアルバイトしてた本屋の店長の事覚えてる? 奥さんが先週、赤ちゃんを産んで……ねえ、聞いてる?」
物思いにふけていたら、手をパチンと叩かれた。
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