偶然を愛する女

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「……聞いてるよ。奥さんって、茜と一緒にアルバイトしていた子だろ?」 「そうそう。友香ちゃん。店長と付き合ってるって聞いた時はびっくりしたけど……私、この話を拓海に話したっけ?」 「うん。僕達が付き合い始めた頃にこっそり、本屋で聞いたと思う」 「そうだったっけ。でも十年も前なのによく覚えてるね」 「そりゃあ。茜が言った事は大体覚えてるよ」 「えー?」  茜はビールで赤くなった顔で、ふにゃりと笑った。 「明日、何処に行きたいんだっけ?」 「覚えてないんじゃん!」 「ごめんごめん。冗談だよ。日用品を買うんだよな」 「そうよ。タオルとか茶漉しとか細々としたもの」 「本屋も行くならショッピングモールがいいな」 「うんうん」  茜はうきうきした様に買い物リストを作り始めた。覗き込むと愛用している化粧品や雑貨を書き連ねていた。これは長い一日になりそうだと、そっとお風呂に向かった。  次の日、あちこちの店でお気に入りの日用品を買い、最後に化粧品を見たいと言う茜と別れて、コーヒーメーカーの即売会によろよろとやって来た。 「今、コーヒーお入れしますね」
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