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営業スマイルを浮かべた担当者に、どうもと頷く。気まずさから買う気もないのにカタログを手に取った。気付けば、同じ様にコーヒーのいい香りに吸い寄せられた男性客が集まっていた。
「お待たせ致しました。どうぞ。一番人気のブルーマウンテンブレンドです」
「あ、有難うございます」
他の客達もどこか遠慮がちにコーヒーを飲んでいる。
「豆の種類は数種類ありまして……」
コーヒーが飲めるようになったのも、茜がよく通っていたカフェに自分も行くようになったからだ。昔はコーヒーなんてただ苦いだけで、美味しいと思ったことは無かった。コーヒー好きだとアピールしたくて、我慢して飲んでいた過去を全力で褒めたい。
「なあに、コーヒーメーカー買うの?」
「茜、買い物終わったの?」
「うん。あ、有難うございます。いい香り」
担当者が茜にもコーヒーを入れてくれ、二人で並んで飲む。今までいた客達は、茜の出現にこれ幸いと去って行った。
「いやあ、まあ。家にあってもいいかなあって、ちょっと思っただけだよ」
「ふうん」
茜が担当者に二、三、質問すると、にっこり笑って少し考えますと僕の手を引いた。
「あっ、また来ます」
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