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年越しそばを食べなかったせいで、大晦日の時空に取り残された
「いーやーだ、食べたくなーい。」
静まり返った夜の闇。一人の少年の声が街に響き渡る。
2020年12月31日19時51分。
福岡県福岡市博多区博多駅前一丁目のとある地域に住む、そば嫌いの少年、
年越嫌は、この日、断末魔の叫び声を上げた。
彼の目の前に広がるのは、一杯のそば。
中では様々な具材が戯れている。
この日食べるそばを、人は「年越しそば」と呼ぶようだ。
・・・・・・彼に迫りくる悪夢。
隣からは、悪魔の使徒の囁きが聞こえる。
「もう17歳なんだから、そばぐらい食べなさい。」
「年越しそばを食べないと、年を越せないよ。」
(何を言っているのだ。そばを食べなかっただけで、年を越せないわけ
ないじゃないか。)
誰もが一度は感じたことのある疑問。
年越しそばを食べなければ、本当に年を越せないのだろうか。
いやいや、そんなはずはない。
年越しそばを食べない文化の家もある。
諸事情で食べられない人もいる。
そもそも海外のほとんどの国には、年越しそばを食べるという風習もない。
それでも彼らは、年を越せている。
次の年にも必ず会える。
科学的に考えても、年越しそばを食べないと年を越せないことを証明することはできない。
地球は、一日をかけて一回転する。これを自転という。また、一年をかけて太陽のまわりを一周する。これを公転という。そばに自転や公転を止められるわけがない。
結論。年越しそばを食べなくても、年を越せる!
Q.E.D.~証明終了~
・・・・・・と、嫌は考えた。
だが、ここにいる父と母は、息子の大義名分に耳を貸すことはない。
父は達人なのか、嫌を強引に組み伏せ、そばの器を持った母は、なんとか嫌に食べさせようとする。
それに甘んじる嫌でもない。両親の束縛を解き、なんとか自室に退避する。
部屋の外側から、両親がドンドンとドアを叩く音がする。
嫌はそれに耳を傾けることなく、深い眠りについた・・・・・ ・
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