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「何が起こっているんだ!!」
とにかくこのことを父と母に報告しなければ!
嫌は4時間前まで両親と喧嘩していたのも忘れて、部屋を飛び出した。
本来なら、ここでドアの影に隠れた父が、嫌の右腕と襟元を掴み、一本背負いを食らわしてくるはずだが・・・・・・ そこにはありえない光景が広がっていた。
なんと、ドアを開けた先には誰もおらず、嫌が重傷を負うこともなかったのだ!
父どころか、母の姿もどこにも見当たらない。
この家には、年越しの直前に寺や神社の前に張り込んで、年越しと同時に押し入り手を合わせる文化はない。この日のこんな時間に両親が出かけるとは考えられない。
あまりに怖くなったので、嫌は家を飛び出した。しかし、外には誰もいない。
まあこんな真夜中の時間だ。めったに人が歩いていることもなかろう。
そこで嫌は、何軒か、近所の家の中を漁ってみた。しかし、どの家もがら空きだった。 一年の終焉を迎える年越し。人によっては、田舎に帰省して、親戚達と共に過ごす者も多いだろう。 とはいえ、どこの家を漁っても人間が一人もいないというのは異常なのではないだろうか。ここは都会とも田舎 とも言えない町。逆に帰省してくる人達だって多いはずなのだ。
にもかかわらず、どこの家にも外にも人がいない。公園にも、交番にも、寺にも、神社にも。
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