それが聞こえると‥

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 あっ、聞こえる。  小学3年のボクは、これが聞こえると服を着替える。  そして、二階の自室から玄関に向かう。  ママは用事をしていて気付いていない。  傘を取ると、ボクは素早く家から出た。  そう、ボクは、雨音が聞こえると家出したくなるのさー。  家から十数分のところにN駅がある。  ボクは、次に到着した列車に乗った。  行き先なんか決めてない。  列車の行くまま、気の向くままさ。 「さーて、何処へ行こうかな‥‥」  ドアが閉まりまーす、という車内アナウンスを聞きながら、車内に掲示してある旅行の広告を見た。 「どこまで行こうかな‥‥?」  次は、S大学前、と車内アナウンスが流れた。 「ここは、S学習セミナーがあるから、いつもなら降りるけど‥‥」  やがてボクが乗った列車は、その駅を出た。  雨はまだ降ってるようだ。 「流れる風景も、今日は見え方が違うな‥‥」  次は、T神社前、という車内アナウンスが聞こえて、まもなくボクぱ、ウトー‥‥ウトー‥‥。  はっと目を開けた。  そこに見えた光景は‥‥ボクの部屋の天井だった。 「あれ? なんで?」  ボクが起き上がった時、下から聞こえた声は、列車の車掌をしている叔父さんで、 『ちょうどT駅を過ぎた時、見付けましてね。起こさないように運んだ次第です。はい』  つづいてママの声で、 『そうでしたか‥‥。ありがとう御座いました』  叔父さんが帰ると、ママが大きな声で、 『マコト、おやつ食べなさい!」 「はーい」  こうして今回も、ボクの家出は失敗に終わった。  ――おしまい――
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