雨音? 足音? 恋の音!!

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降りる駅まで続いた。先輩に呼ばれて降りる。外は雨だった。どうしよう。隣に立つ先輩は傘を持っていない。男の子がよくふざけて雨の中を走っていくけれどやっぱりそうするのだろうか? でも、それで先輩が風邪を引くかもしれない。 「あの先輩。傘、持ってないですか?」 「あ、そーなんだよ。うっかり忘れてたんだわ。いいけどね。走るし」 「あの折り畳み傘があるので使ってください。タオルを貸してもらったお礼です」 「じゃあ、君が濡れることになる。一本しかないんだし、さてどーしたもんか。あ!!」 ポンッと手のひらをうつ先輩が悪戯を思い付いた子供のように笑う。 「二人で傘さしていけばいいじゃん。俺、名案!!」 名案じゃないです。先輩。 「あ、そこ水溜まりになってるから気をつけて」 と先輩が言う。私はそれどころではなかった。折り畳み傘はサイズが小さい。濡れないようにするには自然と相手との距離が近くなる。体格の違いや身長で先輩が傘を持っているけれど、私が濡れないようにしているのか距離がすごーーーーーーーーーーく近い。 高校まで少し歩く、その間にクラスメートに見られたらと思うとドキドキして、先輩のタオルをギュッと顔を隠す。まるで犯罪者みたいだ。悪いことをしていないのに、悪いことしている気分になる。 「ほら、もう少しこっちに来ないと濡れるよ」 グイッと肩を寄せられ、私はあーっと叫びそうになった。何度目かわからない心臓がドキドキして、この雨音がなかったらきっと聴かれてしまうじゃないかと本気で考えた。 もちろん、雨が降らなければ先輩とこうして登校することもなかった。憎めばいいのか、喜べばいいのかわからない。 わからないし、わかりたくない。こんなことで心臓が張り裂けそうなほどドキドキしている。こんな状況を喜んでいる自分がいる。まるで少女漫画のような展開だ。もしかしたら私は雨で転んで夢でも見てるじゃないだろうか? そう思うと残念でもあり、悔しくもある。 「とうちゃーく、いやー、ありがとな」 「い、いえ」 もちろん、これは現実だ。そしてよく見てみると先輩の肩が濡れていた。この雨の中で私が濡れないようにしてくれていたんだ。 「あ、あの先輩。これ、使ってください」 「サンキュー、ってこれは俺のやないかーいってツッコミ待ち?」 「え、あ、そうでした」 「いいよ。ありがとな。なんか濡れた子犬みたいって言ったけど、よく見るとめちゃくちゃ可愛いな」 「あ、か、可愛いっ!?」 「うん。可愛い」 ニッコリと無邪気に笑う先輩。ズルいと思う。先輩はズルい。むぅーっと頬を膨らませて、 「そ、そういうこと言わないでください」 言った。 「放課後も雨が降ってたら、一緒に帰りませんか? 同じ電車なので、あとタオルやいろいろお礼をしないといけないし」 「あはは、ああ、わかった。そうだ。帰りに何か食べて行こうぜ。ハンバーガーとか」 「ハンバーガーは太るから、そ、そのドーナツならいいです」 プイッと背を向けて歩く。先輩が何か言っているけれど聞こえない。いや、聞かない。もう、なんて単純なんだろう。私は、 「恋に落ちるとはよく言ったものです」
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