雨音? 足音? 恋の音!!

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私の朝にやることはまず中学生の頃の自分の写真を見ることから始まる。やぼったい眼鏡に、ボサボサの髪の毛、陰気な顔をした自分の写真。 高校デビューというものがしたかった。長かった髪をバッサリ切って、少し怖かったけれど眼鏡からコンタクトレンズに変えた。鏡に写る自分を見つめてニッコリと笑う。上手く笑えているかわからないけれど、何もしないよりかマシだと思う。 背筋はまっすぐ、猫背にならない。相手の目を見て話す。そういった他人からしたら当たり前の事を私は毎朝、練習している。 親に頼み込んで一人暮らしを始めた。女の子の一人暮らしはいろいろ危険だけれど、高校デビューするのなら親に頼らず一人でなんでもできるようになりたかった。 それから一ヶ月、初めての出来事の連続、掃除、洗濯、ご飯の準備、今まで親がしてきたことをいざ自分でやってみるとすごく苦労した。それでも一年間、続けていれば慣れてくるもので。私は高校二年生。 高校では友達もできた。わざわざ同じ中学のクラスメートがいない高校を選び、それなりに楽しめてはいるのだけれど、 「彼氏、ほしいなぁ」 友達との恋愛の話をすることも増えた。誰が好きで、誰と付き合ったという話で何時間もおしゃべりする。楽しいけれど、私にはそういった話はない。 女の子同士のグループなら気軽に話せるけれど、やはり異性、男の子の前だとどうしても緊張してしまう。もともと人見知りな性格を無理矢理、変えたからどうしても本心という物が出てこない。 恋に落ちるとは言うけれど、本心や本音を隠したままでは恋愛も難しい。いつも通りの時間に玄関から空を見上げれば私の心と同じように、どんよりとした曇り空だった。 一応、折り畳みの傘を持ってはいるけれど、いつ降りだすかわからない空だ。私はできるだけ早足で歩いたけれど途中からポツポツと雨音が聞こえ始めた。 いつもの駅、もう少しで改札と思ったのがいけなかった。ずぶ濡れというわけじゃないけれど、肩や髪が濡れていた。せっかく鏡の前で整えたのにと落ち込んでいると。 ふわっと頭に何かを被せられた。おそるおそる視線を向けると同じ高校の制服を着た男の先輩がいた。どういうことだろう? と思っていると。 「濡れてんじゃん。使いなよ」 「あ、ありがとうございます」 いきなりのことにビックリしながらも、頭の上に置かれたタオルを払いのけるのも失礼で私はおそるおそる手に取る。 「ちょっと汗臭いかもだけど、そこはかんべんな」 「あ、いえ、そんなことないです。はい」 ふわりと漂う汗の匂い。男だ。 「なんかよく見てみると捨てられた子犬みてーな顔してる」 「し、失礼ですよ」 「もっとちゃんと拭かないと風邪引くぞ。ほらほら」 強引に頭を撫でられる。ケラケラと無邪気に笑う先輩を私はじとーっとした目で見る。そしてよく考えると男の人に頭を撫でられていることがわかって、なぜか心臓がドキドキした。
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