彷徨う

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風が吹き荒れて、酷い雨が降っていた。大雨警報も出ている。 窓に雨が打ちつける。私を笑うみたいに、私の声をかき消すように。その音を止めることはない。 真っ暗な部屋。唯一の光はパソコンから出ていた。 光から目を逸らして、中途半端に残っていたビールを飲み干した。 パソコンの画面に、私の筆名は載っていなかった。 もうかなり古いパソコンを力強く閉じた。 何回目だろうか。こんなに心臓が苦しくなるのは。あと何回経験すれば神様は許してくれるのか。 涙がぼたぼたとベッドへと落ちる。 垂れ始める鼻水を拭うことはなかった。 惨めだ。私は惨めだ。私が可哀想だ。 落ちた小説賞はもう、百以上になる。もっとある。もっともっとある。 一次選考や二次選考は何度も通過した。最終選考に残ったことだってある。 なのに、私は最後にスポットライトを当ててもらえない。 自分から自分へ送られる期待値が大きすぎて、その分ショックも大きい。 適当な作品なんて出していない。全部、誠心誠意込めて作りあげたものだ。 なのに、私はいつも落ちる。 惨めだ。 泣き声を上げても、雨音がさらに大きな声で反抗してくる。 私と外の世界が遮断されているみたいだった。 どうして、駄目なのだろう。 選評をもらったことは何回かだけある。プロに添削してもらったこともある。 ダメ出しされたところもよくない文章の癖も直した。完璧に仕上げた、はずなのに。私は必ず落ちる。まるで仕組まれているみたいだ。 先ほど乱雑に扱ったパソコンの中に原稿はまだいくつかある。送るコンテストもなんとなく決めている。ちゃんと対策もしている。どういう作品が賞を取るのか、編集者に刺さるのか。ちゃんと調べたのに。それでも私は賞を取れない。 暗闇の中でずっと彷徨っているような気分だ。光がちょっと見えたと思ったら、それは幻でしかない。 正解も間違いもないこの世界で、私は未だに光を浴びることができない。 昔、一緒に作家を志した人達はデビューしたり潔く諦めたりした。もう仲間はどこにもいない。私はいつまで経ってもどっちつかずだ。 こんなこと、私は望んでいなかった。 涙がシーツに染みきったのに、まだ涙は止まらない。雨も止まりそうにない。 今日のことが全部夢だったらいい。 本当は、私は賞を取っていた。大雨で洗濯物を取り込むのを忘れることもなかった。 そうなったらいい。けど、そうはならない。 お気に入りのシャツは今、ベランダでビショビショになっているし、私は賞に落ちた。 それが現実だ。一体、いつまで彷徨い続ければいいのだろうか。 色々と考えていると、また涙が溢れて止まらない。 ベッドに顔を埋めた。雨音がより一層強くなった。
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