プロローグ:義理の家族ができました。

4/15

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「だ~か~ら~、結婚するの。」 「へぇ〜、結婚ねぇ…ん?結婚?」 「そ、結婚。」 「…まじ?」 「まじ。」 マジな目で答えてくれた。  驚きすぎて、声も出ない。多分、俺の顔は今、口をあんぐりと開けて面白い事になってるだろう。お母さんがスマホ片手に意地悪な笑みを浮かべてるくらいだし。  いきなりだな、おい… 「なによ、あんたが言えって言うから言ったのに。」 「いや、まあ、そうなんだけど…」  いやまあ確かに言ったけど。いきなりすぎだろ。 もうちょい前置きみたいなものを入れてくれよ…  と、ここで、ふとあることを思い出した。 ん?あれ? …………… ちょっと待てちょっと待て。 「……母さん、一つ確認していい?」 「ん~いいわよ~?」 「…離婚届、いつ出したっけ?」   「ん~一昨日。」 軽い調子でトンデモナイことを言った。 乗り換え早っ。離婚した2日後に再婚とか聞いたことねえぞ! 世間体みたいなもんは考えねぇのかよ!? 「あ~ちなみに~、もう結婚届出したから~。」 「もう驚かねぇよ…」  と言いつつ内心では結構驚いている。というか呆れている。  母さんのマイペースさに。  相手の人、大丈夫かな?家事のこととか含めて色々と。  そういう大事なもんは、せめて何か言ってから出せよ…  どうしよう。これはアレじゃないのか?  ほら、アレ。結婚詐欺?とかいうやつ。 「大丈夫よ~。かっこいいし、頭もいいし、優しいし。完璧じゃない。」  …そんなにいい奴がこの世にいてたまるか。ていうかいてほしくないし。  そういうやつに限ってなんか悪いことを企んでたりするじゃん。  この情報で、つい数秒前の疑問が塗り替わった。  つまり、  母さんが結婚詐欺のでは?から  母さんが結婚詐欺のでは?へと。  もしそうだとしたら、俺はその詐欺師の不幸さに涙ぐんでしまうかもしれない。  だって、騙した相手がこれだもん。  日本人口約1億2500万人、もしくは世界人口約78億人の中からこの1人を選んでしまったってことだもん。性別を考えてもその半分、ものすごい人数だ。  可哀想で仕方がない。  騙された母親よりも騙した犯人を可哀想と思うのは、やはりおかしいのだろうか。  …それ以前に実の母親をすぐ疑うのはどうか、というツッコミは胸の内に仕舞っておいてほしい。  それほど、苦労しているという事なのだ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加