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「だ~か~ら~、結婚するの。」
「へぇ〜、結婚ねぇ…ん?結婚?」
「そ、結婚。」
「…まじ?」
「まじ。」
マジな目で答えてくれた。
驚きすぎて、声も出ない。多分、俺の顔は今、口をあんぐりと開けて面白い事になってるだろう。お母さんがスマホ片手に意地悪な笑みを浮かべてるくらいだし。
いきなりだな、おい…
「なによ、あんたが言えって言うから言ったのに。」
「いや、まあ、そうなんだけど…」
いやまあ確かに言ったけど。いきなりすぎだろ。
もうちょい前置きみたいなものを入れてくれよ…
と、ここで、ふとあることを思い出した。
ん?あれ?
……………
ちょっと待てちょっと待て。
「……母さん、一つ確認していい?」
「ん~いいわよ~?」
「…離婚届、いつ出したっけ?」
「ん~一昨日。」
軽い調子でトンデモナイことを言った。
乗り換え早っ。離婚した2日後に再婚とか聞いたことねえぞ!
世間体みたいなもんは考えねぇのかよ!?
「あ~ちなみに~、もう結婚届出したから~。」
「もう驚かねぇよ…」
と言いつつ内心では結構驚いている。というか呆れている。
母さんのマイペースさに。
相手の人、大丈夫かな?家事のこととか含めて色々と。
そういう大事なもんは、せめて何か言ってから出せよ…
どうしよう。これはアレじゃないのか?
ほら、アレ。結婚詐欺?とかいうやつ。
「大丈夫よ~。かっこいいし、頭もいいし、優しいし。完璧じゃない。」
…そんなにいい奴がこの世にいてたまるか。ていうかいてほしくないし。
そういうやつに限ってなんか悪いことを企んでたりするじゃん。
この情報で、つい数秒前の疑問が塗り替わった。
つまり、
母さんが結婚詐欺しているのでは?から
母さんが結婚詐欺されてるのでは?へと。
もしそうだとしたら、俺はその詐欺師の不幸さに涙ぐんでしまうかもしれない。
だって、騙した相手がこれだもん。
日本人口約1億2500万人、もしくは世界人口約78億人の中からこの1人を選んでしまったってことだもん。性別を考えてもその半分、ものすごい人数だ。
可哀想で仕方がない。
騙された母親よりも騙した犯人を可哀想と思うのは、やはりおかしいのだろうか。
…それ以前に実の母親をすぐ疑うのはどうか、というツッコミは胸の内に仕舞っておいてほしい。
それほど、苦労しているという事なのだ。
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