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家に向かう道すがら、青空が目に映り、世の人の心模様を憂いた。だが致し方ない。空にも雲がかかるように、心にも雲があればこそ、人はその美しさを知るのだ。
指示された家に着くと、直ぐ様依頼主の女性が迎え入れてくれた。家の中に招かれ、システムを説明したあと、より詳しく話を聞く。全てを話し終えた女性はとても悲しそうに、そして寂しそうに、顔を歪めて呟いた。
「毎日、空気が重くて苦しくて。どうにかやっていくにしても別れるにしても、そろそろきちんとしなくちゃ……」
覚悟を含んだその言葉を、ボクは受けとる。
「分かりました。お辛いですね。お心が決まるまで、お付き合いさせていただきます」
そして時間が経ち、依頼主の夫が帰宅した。
「どちらの肩を持つこともない第三者を交えて、きちんと話をしたくて」
そう説明した彼女に、夫は呆れたような顔をしながらもボクの同席を受け入れた。昨今のレンタル市場の盛り上がりも相まって、割りとすんなりと受け入れられたことに安堵する。
「基本的に、空気を清浄にする糸口が見つかるまでは話し合いに口は挟みませんので。お気になさらず、話してください」
ボクのその言葉を皮切りに、話し合いは始まった。
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