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ここで、一旦ボクが割って入った。
「真希さん、直哉さん。いったん、落ち着きましょう」
「私は落ち着いてます」
「俺も大丈夫です」
ふたりとも、自分は冷静だとアピールしてきたが、一度この流れを強制的に切ることが必要そうだ。
「空気が、重すぎます。一度重くなりすぎた空気を清浄に近づけるため、話を整理しませんか?」
ふたりは、分かりましたと言って押し黙った。真希さんは小さく胸を膨らませ、気づかれない程度の深呼吸をしている。
「では、直哉さんの言い分から。まず、ひとつ。家庭を疎かにしてしまっているのは、仕事が忙しく疲れていて余裕がないから。もうひとつ。休みの日くらい、ゆっくりさせてほしい。それらのことで、いちいち不機嫌にならないでほしい……と、いうことで宜しいですか?」
「問題ありません」
ボクは直哉さんの返事にひとつ頷いて、今度は真希さんに問いかける。
「では、真希さん。次は、あなたの言い分です」
真希さんは、ごくりとつばを飲み込んだ。
「真希さんのおっしゃりたいことはひとつ。家庭のことを疎かにし過ぎではないか。疲れているのは直哉さんだけではない。自分だって疲れている。つまり、家事や育児にもう少し参加してほしい。……と、いうことでお間違いないですか?」
「ま……まあ。問題はないです」
真希さんは、少し考えるそぶりを見せてから、肯定を示した。
「ありがとうございます。大分、スッキリしてきましたね。空気も良くなってきた。おふたりの性格も、分かってきましたよ。納得です」
ボクのその言葉に、直哉さんが反応を示す。
「なにが、納得なんですか? 俺には、このまま話を続けても堂々巡りにしか思えません」
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