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「ありがとうございました。もう、大丈夫です。レンタル空気清浄さんがいなかったら、どうなっていたか」
「とんでもございません。私は、新しい空気を入れたまで。それを受け止めて取り込んだ、おふたりの心の柔軟さが運んだ結果です。この度はご依頼いただき、ありがとうございました」
「感謝してもしきれません。心に余裕をもって、これからはお互いのことを話していけたらと思います」
「素晴らしいことです。おふたりなら、きっと少しずつでも歩み寄っていけますよ」
「「ありがとうございました」」
頭を下げたふたりの表情が、話し合いの前とは比べ物にならないほど柔らかくなっていることは、見なくとも容易に想像ができた。大変なのはこれからも変わらないだろう。だが、根本的なことを再確認した今、この部屋にどんよりとした重い空気は存在しない。
刺々しく重苦しかったこの家の空気は、柔らかなものに変わったようだ。
「では。ボクはこれで失礼いたします。この件でお会いすることは今後ないことを祈っております」
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