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「なる程ね。ベネチアンマスクって何だか変態の仮面舞踏会風だよなぁ。大人のハロウィンパーティーってところか。まぁいいか。深く考えても仕方ないな折角の機会だし参加しようか」
天野はブツブツと言っていたが、最後は大きく頷いていた。
「うん」
もちろん私も大きく頷いた。
「分かりました。それでは参加すると連絡しますね」
私と天野の返事を受けて、岡本は早速スマホを操作していた。長い指が素早くディスプレイ上を滑っていく。
すぐに返事が返ってきたのか、岡本のスマホが「ポーン」と音を立てていた。
「返事がきました。『三人で是非来てくれ』と書いてあります。とても喜んでますね、そう言えば僕は初めての参加ですからね」
「ははは、岡本に恋人が出来たから歓迎しているんだろ」
天野が恋人と言った。それは私達三人の事を指す言葉だ。私は照れくさくなって正座をしていたお尻がムズムズとした。
「僕らのリクエストに応えて衣装を用意してくれるそうですよ。それぞれのサイズを測って連絡して欲しいそうです。天野さんと倉田さんにアドレスを送るので期日までに返信しておいてくださいね」
岡本は手早く私と天野にメールを送ってくれた。私と天野のスマホがそれぞれ音を立てていた。
「分かった。まずは仮装だな何にしようか?」
天野が「うーん」と天井を見つめて悩んでいた。
「そうよね」
私も天野の言葉に頷いた。
見せてもらった写真の女性二人はメイドだった。グラマラスな女性でセクシーにも見えるがとても可愛いかった。私も可愛い格好がいいなぁ。可愛いのあまり似合わないし。なんせ顔は派手だし身長も167センチと高いし。やはり怖い系かな。可愛いお化けってないかしら。
私だったらどんな仮装がいいかと考えていると、手元にあるたたみかけのシーツが目に留まった。そうだわ。こうやってシーツをかぶるだけでもお化けに見えたりするわよね。ありきたりすぎるかしら。
モゴモゴしている私の隣で、天野に向かって岡本が指を指した。黒縁眼鏡の向こうで意地悪そうに切れ長の瞳が弧を描いた。
「衣装のリクエストは受けつけているそうですよ。だったら天野さんはアメコミヒーローとかどうです? サーフィンで鍛えた逆三角形の上半身を生かすには最適ですよ」
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