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01 ハロウィンなのにこんな事に
高級なソファは柔らかくて程よく固くてこんなに座り心地が良いものだとは知らなかった。私の部屋のベッドより寝心地がいいだろう。
座っている先には小さな舞台があり、ピアノとバイオリンの演奏が披露されていた。ここは森の中にあるオーベルジュだ。
美味しかった食事を終えた私は、生演奏を聴きながらお酒を楽しもうとしていた。
他の客である、何組かのカップルが背の高いソファに座り同じ様に演奏に耳を傾けている。いつもは普通のオーベルジュなのだが、今は貸し切りで限られた人達のパーティー会場となっていた。
皆、上等なドレスや衣装に身を包みベネチアンマスクをかけている。中には何故か、獣の耳や揺れる尻尾が見える。角が生えていたり牙が見えたり。奇抜な衣装もあるが基本的にはドレスとスーツという正装だった。
私の目の前のテーブルに食後酒であるカクテルに手を伸ばそうとした。しかし、慌ててその手を引っ込める。
あっまただ。私が動こうとしたら、どちらかが振動をはじめるボタンを押している。
私は堪らず心の中で歯ぎしりをした。突然の振動に襲われたからだ。
振動がお腹の奥で私を少しずつ狂わせていく。音楽が鳴り響くサロンで、体の中に潜り込んだ振動する道具のモーターはとても小さくてかき消される。
「くっ、ふっ」
私は膝小僧を擦り合わせるとお腹の前で組んだ両手をきつく握りしめる。歯を食いしばり快楽に陥れようとする振動に耐える。この快楽が大きな波に変わろうとした時、振動はゆっくりと小さくなるのでさざ波となって淡く消えていく。
声を出さないまま小さな溜め息をつく。危うく声を出すところだった。私の必死に耐える様子を面白そうに見つめているのは両隣に座るベネチアンマスクをかけた二人の男だった。
右隣に座る吸血鬼姿の男はゆっくりと私の耳元で囁いた。
「ねぇドレスの上からでも乳首が尖っているのが分かりますよ」
吸血鬼姿なのにミントの香りがする吐息を吹きかけられ思わず肩を上げる。更に男はレースを押し上げている胸の先を指でひと撫でする。私は思わず背中を反らせて赤く塗ったルージュの唇を上下きつく合わせた。
黙秘を続ける私に鼻で笑ったのは左側に座る狼男の姿をした男だった。
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