01 ハロウィンなのにこんな事に

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 岡本は黒髪を後ろに撫でつけていた。白いシャツに深紅のアスコットタイ。シルバーのベストは珍しくダブルだった。ボタンもシルバーの装飾が施されていて特徴がある。岡本の長い足は黒いズボンで包まれていて、くるぶしまである長いマントを身に付けていた。  たっぷりと布を使ったマントの内側は、シルバーの布地で岡本の体のラインを浮かびあがらせスタイルの良さを際立たせていた。いつもかけている眼鏡を外し、銀色のラインストーンで縁取られた黒のベネチアンマスクから切れ長の瞳が覗いている。笑うと歯が見えた。犬歯の部分に白い牙が見える。まさに吸血鬼(ヴァンパイア)だった。  天野は緩くウェーブのかかった髪型から耳を生やしていた。シルバーグレイの狼の耳だった。服装は白いシャツの胸元は大きく開いていて、首に皮で出来たチョーカーをつけていた。吸血鬼(ヴァンパイア)と色違いのベストは赤が基調のタータンチェックで可愛かった。マントの代わりに体にフィットしたジャケットを羽織り、ズボンのお尻の上に長さ五十センチほどの尻尾がついていた。狼男(ワーウルフ)の正装だ。  銀色のラインストーンで縁取られたベネチアンマスクの奥から二重の甘い瞳が見える。口元を歪ませて笑うと尻尾がフサフサと左右に揺れた。どんな仕組みなのか分からないけれども、天野は狼男(ワーウルフ)になっていた。 「「「……」」」  私達三人はお互いの姿をたっぷりと見つめた。  凄い本物みたい。仮装どころではない。岡本のなまめかしさと、天野の野性的な感じに私は鳥肌が立った。 「本当に倉田さんですよね?」 「びっくりするぐらいエロいけど」 「「可愛い……」」  最初の言葉は違えど、岡本と天野は最後二人で声を合わせて私を可愛いと褒めてくれた。  その聞き慣れない言葉に私は顔を赤くする。 「ありがとう。岡本も天野も凄く似合ってる。格好いいよ。まるで映画から出てきたみたい」  あまりにもキラキラした姿に私は直視出来ずに視線を逸らしながら呟く。直視できないのそっと見上げてみる。 「まずいですよ天野さん。僕、部屋に帰るまで待てないかも。既に前屈みとかありえないです」 「俺も同じ意見だけどさ落ち着くんだ。それにゲームだってあるし我慢だ」  とても素敵なのに鼻息が荒くなり前屈みになった二人は、お互いの肩を組んで何やらブツブツ呟いていた。
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