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「俺の事を知ってるなんて驚いたぜ。波に乗っていたのはもう何年も前なのになぁ」
天野は驚いて笑っていた。
天野は過去に、プロサーファーを目指していて世界中の大会に出ていたそうだ。怪我が原因でプロを目指す事は諦めたそうだけれども。ファンと言われたのは嬉しかった様だ。
「本当ですよファンだなんて初めて聞きました。嫌な誤解をされましたけれども」
吸血鬼姿のまま口を尖らせる岡本だった。まるで子供の様に見える。
「俺達ストレートなのにな。隣にいる二人の女性ってもしかしてスティーブンの恋人か?」
日本語に戻りボソボソと天野が呟く。
「恋人じゃなくて夫婦ですよ。法律上成立していませんけれどもね」
岡本が笑いながら天野の背中を叩いた。
「えっ、そうなの」
私は驚いて次々と招待客に声をかけるスティーブンと二人の女性を見つめる。
「俺達と似てると思った。それに招待客のほとんどが複数でのカップルだよな。あっちなんて男女四人組だぞ。人それぞれだなぁ」
皆様々な仮装に身を包む。ここは日本だが日本人以外も多くいる。皆ベネチアンマスクをつけているから、周りに気を遣う必要なく談笑している。
同じ匂いがする仲間の中、私達三人も手を取り合って食事の席についた。
私達三人は美味しい食事に舌鼓を打ち、森の美しい木々が望めるサロンに移動した。ライトアップされた森の木々を眺めて食後のお酒を頂く。後でこのサロンで演奏会が開かれるそうだ。背の高いソファにそれぞれ招待客が座り、ゲームに興じている。皆が興じているのはポーカーだった。
「ゲームってポーカーなの?」
私が尋ねると岡本はテーブルに置かれたカードを長い指で切りながら笑った。
「そうです心理戦のポーカーですよ。どのカップルも罰ゲームを賭けて対戦している様ですね」
周りを見ると背の高いシートにそれぞれのカップルが座っているので見えないが、小さな歓声をあちこちで上げている。
「そうみたいね。うーん、ポーカーかぁ」
言うほどやった事がないのでどうなるのか見当もつかない。
「俺達も対戦しようぜ」
天野の声で開始となり、三人でゲームをする事になった。
カードが配られ自分の手札を見る。
「うーん」
私が根眉を寄せると天野がプッと笑った。
「そんなにしかめっ面をしなくても」
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