02 罰ゲーム

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「俺の事を知ってるなんて驚いたぜ。波に乗っていたのはもう何年も前なのになぁ」  天野は驚いて笑っていた。  天野は過去に、プロサーファーを目指していて世界中の大会に出ていたそうだ。怪我が原因でプロを目指す事は諦めたそうだけれども。ファンと言われたのは嬉しかった様だ。 「本当ですよファンだなんて初めて聞きました。嫌な誤解をされましたけれども」  吸血鬼(ヴァンパイア)姿のまま口を尖らせる岡本だった。まるで子供の様に見える。 「俺達ストレートなのにな。隣にいる二人の女性ってもしかしてスティーブンの恋人か?」  日本語に戻りボソボソと天野が呟く。 「恋人じゃなくて夫婦ですよ。法律上成立していませんけれどもね」  岡本が笑いながら天野の背中を叩いた。 「えっ、そうなの」  私は驚いて次々と招待客に声をかけるスティーブンと二人の女性を見つめる。 「俺達と似てると思った。それに招待客のほとんどが複数でのカップルだよな。あっちなんて男女四人組だぞ。人それぞれだなぁ」  皆様々な仮装に身を包む。ここは日本だが日本人以外も多くいる。皆ベネチアンマスクをつけているから、周りに気を遣う必要なく談笑している。  同じ匂いがする仲間の中、私達三人も手を取り合って食事の席についた。  私達三人は美味しい食事に舌鼓を打ち、森の美しい木々が望めるサロンに移動した。ライトアップされた森の木々を眺めて食後のお酒を頂く。後でこのサロンで演奏会が開かれるそうだ。背の高いソファにそれぞれ招待客が座り、ゲームに興じている。皆が興じているのはポーカーだった。 「ゲームってポーカーなの?」  私が尋ねると岡本はテーブルに置かれたカードを長い指で切りながら笑った。 「そうです心理戦のポーカーですよ。どのカップルも罰ゲームを賭けて対戦している様ですね」  周りを見ると背の高いシートにそれぞれのカップルが座っているので見えないが、小さな歓声をあちこちで上げている。 「そうみたいね。うーん、ポーカーかぁ」  言うほどやった事がないのでどうなるのか見当もつかない。 「俺達も対戦しようぜ」  天野の声で開始となり、三人でゲームをする事になった。  カードが配られ自分の手札を見る。 「うーん」  私が根眉を寄せると天野がプッと笑った。 「そんなにしかめっ面をしなくても」
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