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「黙っていてもここがこんなになるってのはさ。感じている証拠だよな。恥ずかしいよな」
コーヒーリキュールの香りがする吐息で囁いた。そして左の胸の尖りを押し込む様に触れた。
「んっ」
二人に触れられて、鼻から抜ける様な小声を上げてしまう。
悔しくて二人を睨みつけると吸血鬼と狼男姿の男はベネチアンマスクの奥の瞳を満足そうに細めた。
素敵なオーベルジュでゆっくりと週末を楽しむはずだったのに。
ハロウィンパーティーを楽しむはずだったのに。
素敵な演奏を聴きながらお酒をゆっくりと楽しむはずだったのに。
どうして私は、拳より小さい妙な形をしたショッキングピンク色をしたアレを、振動するアレを。
──大人の玩具を装着しているのだろう。
「何でこんな事に」
私はポツリと呟いた。
私の名前は倉田 涼音。歳は三十一歳。下着会社に勤めている。辛い事も楽しい事も全てひっくるめて仕事一辺倒の毎日だ。仕事はとても充実しているが、プライベートは地味なものだった。彼氏なしの日々を過ごしていた。彼氏がいたのは大学が最後だったかしら。
それなのに二人の男性と同時に関係を持ってしまった。
今年の慰安旅行で社内の一位、二位を争う男性二人と同時に関係を持ってしまったのだ。つまり三『ピィー』コホン、伏せ字になっていなかったわ。ごめんなさい。
この関係は一度きりか、それとも今後も続けるのか。
悩んでいる時、関係を持った天野 悠司はこう答えた。
「複数でやったからってそんな気にする必要はないぜ。俺は倉田と岡本ならいい」
私と同じ歳で浅黒い肌に茶髪のという一見チャラそうな風貌だった。昔プロサーファーを目指していた名残なのだそうだ。海外で過ごす事が多かったそうで英語はペラペラ、顔もイイしとても優しい。女性慣れしているところを見ると、きっとベッドを共にしたのは数え切れないだろう。
そしてもう一人。関係を持った岡本 聡司はこう答えた。
「僕らが普通じゃないのなら、普通じゃないのでしょう。でもそれでいいんですよ」
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