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私より二歳年下の彼は、眼鏡にさらりとした黒髪と整った顔が印象的だった。五カ国語を操るアメリカ育ちの超エリート。素敵で魅力的なのに彼女が今までに一度もいなかったそうだ。実は、彼女がいなかっただけで経験がないというわけではないという大問題児だった。
色々悩んだけれども、この二人の言葉に私は「三人で」の関係を続ける事にした。
彼氏なしの私が彼氏が出来るどころか、まさかの三人でなんて実は今でも信じられない。
そしてこれは「三人で」とあるパーティーに行った時のお話。
事の起こりは九月はじめの週末に遡る。
「ハロウィンパーティー?」
私は岡本の家で洗濯物をたたみながら首を傾げた。
「そうなんです。実は僕の知人がオーベルジュのオーナーなんですが、ハロウィンパーティーを開催するそうなんです」
私の向かい側でアイロンがけをしていた岡本が話しはじめた。黒縁眼鏡の向こう、切れ長の瞳はシャツの皺を逃さないと見つめている。
「オーベルジュでパーティーをするのか? しかもハロウィンって。オーベルジュならウエディングパーティーぐらいしか聞いた事ないなぁ。よし終わりっと」
するとキッチンの奥から洗い物を終えてエプロンを外す天野の声が聞こえた。
私と天野と岡本の三人は、週末必ず岡本の家でお泊まりをする事になっていた。
金曜日の夜から月曜日の朝までずっと三人一緒に過ごす。同じ会社に勤めているからバレないかとハラハラする事もあるけれども。この数か月は週末お泊まりを重ねても誰にもバレずに過ごしていた。
三人での順調な(?)毎日。お付き合いと言えるのかどうか(今更だけれども)を続けている。
そんな中、突然の岡本のパーティー話だった。
「オーベルジュですからね招待出来る人数は限られているんです。当日はオーナーの貸し切りで、仲の良い知人だけを呼んでハロウィンパーティーをするそうですよ。うん、綺麗に仕上がりました」
岡本が綺麗に仕上がったシャツを満足そうに見つめてアイロンの電気を切った。
「ふぅんそうなんだ。何処のオーベルジュだ?」
天野がコーヒーが入ったトレイを片手に持ちながらリビングのテーブル
「確か「ファル」と言う名前のオーベルジュです」
天野が上を向きながら思い出した名称を口にする。私は思わず驚いて声を上げた。
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