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「それはどうかなヒーローは格好いいけどさ。それに岡本見せてくれた写真は、仮装しているとはいえ、まぁまぁな正装だったよな?」
「あっバレました? ドレスコードがそこそこありますけれども、天野さんなら許されそうですし。スーツヒーローに抵抗あるなら、メカ系のヒーローとかは」
「ドレスコードがある中で、何で俺だけそんな風になるんだよ。俺がアメコミヒーローなら、岡本は赤と白のボーダーのシャツを着てジーパンとかどうだ? 頭にはシャツと同じボーダーの三角帽子をかぶってさ」
「えぇ~僕、オーベルジュの中で探されるんですか?」
「岡本は細身だし。それに最近、家用の眼鏡を丸い黒縁にしたから益々似てるぜ。いいんじゃね? それでベネチアンマスクかければ最高の変態だな」
「くっ! もやしっ子みたいな言い方はやめてくださいよ。僕だってジムに通って鍛えているんですからねっ」
「変態の部分は否定しないんだな。倉田はどう思う? って何してんの」
「倉田さんはどんな衣装がいいですか? ってそれはもしかして」
天野と岡本が突然私に向かって振り向いた。
「私はハロウィンらしくお化けなんてどうかなって。このまま青白く光るとか。そうだわ! いっそのこと顔だけ白くて体が黒いのはどうかしら? 意外と怖そうよね」
白いシーツをかぶったまま私は二人に尋ねた。
たっぷりと無音が続き岡本と天野はゆっくりと口を開いた。
「顔だけ白くて体が黒いって」
「何処かで見たアニメのキャラだろ」
倉田は何処かズレていると深い溜め息をつかれてしまった。
十月になり週末、私達三人は天野が運転する車に揺られて中心部から離れ、山間部にあるオーベルジュ「ファル」を目指す。
助手席には岡本が座り後部座席には私が座っていた。中心部を走っている時に、会社の誰かに見つかっても言い訳がしやすい様にこの席順になった。
中心部を離れ山道に入った頃、私は後部座席の真ん中から前の席に顔を出して天野と岡本の横顔を見つめた。
「泊まる部屋の写真をオーナーさんが送ってくれたのだけど、凄いのよ露天風呂がついているの!」
森の中にひっそりと佇むコテージ。高級感溢れる家具でも可愛いものが多く、森の中でゆっくりと浸かるお風呂は日々の癒やしになりそうだ。
「そりゃいいなぁ。最近忙しかったし、ゆっくり出来そうだな」
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