行き倒れていた男と極寒の夜に一つのベッドで温め合いました

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 辛い境遇の中にいながらも、いつか生き別れた姉と再会する、という希望は捨てていなかったのだという。  ヴィンセンは微笑む。 「お前の居場所は取り戻した。だから……私と二人で国に戻ろう。そして私の妻となって、ともに生きてくれないか?」  彼からの真っ直ぐな求婚に、心臓が跳ね上がった。  しかしすぐさま、心の奥がジワリと熱くなる。握った両手が震え、鼓動が早鐘を打つ。  瞳の奥にツンとした痛みが走り、視界がぼやけた。 「うれ……しい。また寒くなったら……温めてくださいますか?」 「ああ、もちろんだ。もう二度とお前に、寒い思いなどさせない」  ヴィンセンは立ち上がると、握っていたサヨの手を自分の元へ引き寄せた。腕の中にいるサヨを、二度と離すまいと強く抱きしめると、首筋に顔を埋めた。  彼の逞しい身体に腕を回すと、サヨも力一杯抱きしめ返す。  言葉が出なかった。  サヨの長い冬に、春の日差しと温かい風が吹き込む――  その時、
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