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行き倒れていた男と極寒の夜に一つのベッドで温め合いました
サヨ・レイナードは、マイリン村の外れでひっそりと一人で暮らしていた。
艶やかな長い髪が揺らしながら出てきた彼女の細い腕には、大きな籠を抱えられている。
彼女は、薬草師だ。
近くの森や山などに出向いては、様々な効果のある薬草を集め、煎じ、マイリン村の人々が必要とした時に提供することを生業としていた。
冬がすぐ傍まで来ているため、今日も空はグレー色の雲で彩られている。肌を刺すような冷たさに、サヨは身をぶるっと震わせた。
遠くに視線を向けると、隣国の通り道となっているガリア山が白くなっているのが見えた。あちらではもう雪が大量に降り積もり、春まで通行止めになっているだろう。
(今年の寒波は、いつもよりも早かったですからね。早めに冬支度しておいて良かったです。この調子だと、この村が雪に閉ざされるのも、もうすぐでしょうね)
村が雪に閉ざされてしまれば、易々と外に出ることは出来ない。近所に行くぐらいなら問題ないが、今みたいに、薬草を採りに森に行くことは春までお休みになる。
吐き出す白い息を見つめながら、自分の判断の適切さに、心の中で胸を張った。
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