いいえ、このままで

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明日 僕は君とお別れをします 君の貸し出し期限は明日まで 僕の十歳の誕生日に君がやってきてから 明日で五十年が経ちます 五十年 君を借りるには 十分な契約期間でした 母も僕も まさか僕が五十年後も生きているなんて 思ってもみなかったのです 動けない身体で生まれてきた僕は 学校に通えないどころか 外出さえまともにできませんでした それで母は僕の友達になればいいと 十歳の少年の姿をした最新型のアンドロイドを レンタルすることにしたのです 保険の対象にならないそれは 母ひとりが支払うには ひどく高額なものでした ですが母は僕に友達を作ろうと 毎日必死に働いてくれたのです 君が初めて僕の部屋にやってきた日は ほんとうに驚きました 皮膚も髪も目玉も 人間そのものなのですから 会話だけはどうやら少しとんちんかんでしたが ひとりで部屋にいるよりはずっといいものです 一緒に映画を見たり とんちんかんな会話を楽しんだり 窓から見える桜が咲いたり散ったりするのを 毎年ふたりで眺めました
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