18人が本棚に入れています
本棚に追加
明日 僕は君とお別れをします
君の貸し出し期限は明日まで
僕の十歳の誕生日に君がやってきてから
明日で五十年が経ちます
五十年
君を借りるには 十分な契約期間でした
母も僕も まさか僕が五十年後も生きているなんて
思ってもみなかったのです
動けない身体で生まれてきた僕は
学校に通えないどころか
外出さえまともにできませんでした
それで母は僕の友達になればいいと
十歳の少年の姿をした最新型のアンドロイドを
レンタルすることにしたのです
保険の対象にならないそれは
母ひとりが支払うには ひどく高額なものでした
ですが母は僕に友達を作ろうと
毎日必死に働いてくれたのです
君が初めて僕の部屋にやってきた日は
ほんとうに驚きました
皮膚も髪も目玉も
人間そのものなのですから
会話だけはどうやら少しとんちんかんでしたが
ひとりで部屋にいるよりはずっといいものです
一緒に映画を見たり
とんちんかんな会話を楽しんだり
窓から見える桜が咲いたり散ったりするのを
毎年ふたりで眺めました
最初のコメントを投稿しよう!