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第二話【身勝手な男】
その男ブラックはシロン達を追いかける。
マジパンの村をぐるぐると駆け回るシロンとハニーを助けようとする者は居なかった。
人間に楯突くとどうなるのかをよく知っているからだろう。
コルクを取り戻した命の恩人に対して薄情と感じるかもしれないが、人とお菓子の差は簡単には埋まらない。
「どうしよう!どうしよう!どうしよう!?」
どこに逃げても無駄。
その答えが出ているからこそ、その後の事が何も浮かばなかった。
ハニーは黙りこくり、バーバラは大泣きしている。
人間に対する恐怖がそうさせるのか、足は止まらないが肺がいつもよりも多くの酸素を要求している気がした。
バーバラとハニーの助けで酸素の供給は間に合っているのでなんとかなってはいるものの、ブラックは真っ直ぐシロン達を追いかけてきていた。
彼は真っ直ぐ。
ただ愚直にマジパンの村を破壊しながら、家屋があれば突き破り、板材が有れば踏み荒らし、食品は無惨に蹴飛ばされた。
「あんなのどうしたらいいの?」
追いかけられる恐怖とその先の不安。
港に人間が現れたと言うので港は他の人間が居る可能性があり近づくことが出来ない。
船で逃げるのは不可能だ。
「お頭、レモネードに助けを求めましょう」
シロンも一瞬頭に過ぎったが、今後この村をコルク職人として守っていく彼が傷付くのはシロンも本意ではない。
それに、入門書を助けるのに協力してくれた恩もあり、巻き込むのは気が引けた。
シロンは首を横に振る。
「駄目だよ……レモネードさんを巻き込む訳にはいかないよ!」
ハニーは自分のやった事の愚かさと、自分の髪の花を見た。
「お頭、アタシが時間を稼ぐんで、その間に逃げてください」
鞭を引き抜き、シロンの手を振り払い逆方向へと飛び出すハニー。
「駄目だよハニー!逃げなきゃ!!」
「アタシが勝手なことしたから……だから、責任はアタシが取る!」
ブラックは急に方向転換して鞭を振り回すハニーをまるで見ていなかった。
彼が今気にしているのはハニーではないということだ。
シロンのための時間稼ぎにだからこそなると思い、鞭を振り回す。
人間にはお菓子な人々のどんな攻撃も当たらない。
だから、威嚇程度のもののつもりだった。
しかし、横に凪いだその鞭はブラックの左腕を絡め取り、ブラックの足を止めたのだった。
「なんだと?」
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