第一章【お菓子な海賊団】第一話【マジパンの村】

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第一章【お菓子な海賊団】第一話【マジパンの村】

港に一隻、ビスケットで出来た船に乗る女が一人、頭に黒い猫のような頭巾を胸元を大きく開いたハート型のシャツとフリルの付いた黒いハーフパンツ、黒いブーツを甲板で踏み鳴らし、ビスケットに混ざったカシューナッツが小気味よい音を鳴らす。 「やっぱりお頭ってばダンス好きよねぇ」 緑の髪の三つ編みツインテールに真っ赤な花を2つ咲かせ、赤のバンダナを巻いた船員がコーヒー片手にそうやってのたまう。 彼女は彼女で上機嫌に鼻歌交じりでシロンのステップに合わせている。 「駄目ですよハニーさん、これから港なんですから宿も取るんです!コーヒー飲んだら眠れなくなりますよ?」 ハニーはシロンに咎められるも、目の前でコーヒーを空にすると鼻息荒く豪語する。 「うっさい!アタシは飲みたいときにコーヒー飲むの!」 「もー」 頭をかいて用意を始める。 この船にはハニーとシロンの二人しか乗っていないのだ。 猫の髑髏と肉球が描かれたオブラートの帆が閉じられ、チョコの錨が降ろされる。 「ここがお頭の言ってた?」 「そう、甘い密と花の洞窟の港メイプルだよ!」 船着き場で上機嫌だったシロンの顔が凍りついた。 「いや、ここはメイプルじゃねえよお嬢ちゃん」 「がーん!!」 頭を思い切り殴られたかのように数歩よろけた。 「えっ、じゃあここって?」 漂う甘い香りはメイプルに似ている。 「ここはメイプル港の真反対のシュガー港さ」
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