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第3話
「五郎!いつまで寝てるの?もう中学生なんだから、ちゃんと一人で起きれるようになりなさい!」
新緑の隙間から薫風が吹き抜ける朝。
俺は姉のアラームによって、不本意ながら目を覚ます。
「ああ……お早う。誠に不本意ながら目を覚した」
「思ってることそのまんま口に出てるわよ! ……全く、中学に入ってやっと楽しそうにしてると思って安心してたのに、遅刻癖は治らないのね」
「うむ。俺とて起床時間を一定にしようという気概はある。しかし慣れない部活動で体が追いついておらんのだ…」
「まだ13歳でしょーがあんた。何おじいちゃんみたいな事言ってんのよ」
おじいちゃんとは心外な。
咄嗟にそう思ったが、確かに俺は他の部員よりも明らかに体力が足りない。
俺は中学に入り、興味があるというただそれだけの理由で経験者でもないのにテニス部へ入った。
うちの学校のテニス部は、団体戦で30連覇、個人戦でも18連覇するような超強豪だった。
小学生の頃から有名選手だった者たちが腕を鳴らして入ってくる部活に、よくも俺は1ヶ月もついて行くことができたと自分で感心する。
しかしその感心は誰にも届いていない。
他の部員たちには勿論、今目の前にいる姉にでさえ……
「また何か余計なこと考えてるでしょ?さっさと準備して行きなさいよ」
俺の考えはまるでほぼ全て見抜かれるようだ。
姉は俺を一瞥し、そう言い残してから会社へ向かった。
俺も溜息をつきながら朝の支度をする。
俺が中学では比較的受け入れられていて楽しい毎日を送っていること。
強者ばかりの厳しい部活にも何とかついていけてること。
これらは、俺の親友である、ある男のお陰なのだ。
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