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第6話
ふと振り向くと、そこには小学生の頃、俺を揶揄っていたグループの中心的な人物が傘を指して立っていた。
「よお五郎。びしょ濡れじゃねーか、どうしたん?」
「見ればわかるだろう。傘を忘れて走ってきたのだ」
「ふん。相変わらず生意気なんだな」
「生意気も何も同い年だろう。特に用がないなら俺はもう行くぞ」
電車の音が近づく駅の方向を見ながら俺は言う。
しかしそいつは、その粘着的な目線を俺から離さなかった。
「なあ五郎。お前の学校、可愛い子多いんだって?お前のことだから早速手出したりしてるんじゃねーの?」
そいつは俺の顔を覗き込むようにして、ニタニタと問いかけた。
「馬鹿言え。俺は毎日部活で忙しい。そんな暇は無い」
「そんなヒョロガリのお前が?いやいや何部だよっ!」
「テニス部だ。」
「テニスぅぅー?お前の学校、テニス強いんじゃねーの?お前が続けられるわけ無いだろ」
「それは俺にもわからん。だが今は楽しんでいる。6月の大会にも出られることになったからな」
「は!?もう試合出んの!?」
「ああ。まあ俺のペアの奴が小学生の頃から全国区で活躍していた奴だからな」
「なぁーんだぁ。じゃあそいつのお陰じゃん」
いちいち絡みつくような質疑応答だ。
こいつとの不快な会話をしているうちに、今来た電車は去ってしまった。
「ああ、そうだな。俺の力だけでは到底無理な話だった。ペアには感謝せねばならん」
俺はそいつとこれ以上話すつもりはなかったため、そう言って背を向け駅に向かって歩き出した。
すると後ろから突然大きな衝撃が走った。
「!?」
ドン!と大きな音と背中に走る痛み。
俺は一瞬何が起こったか分からなかったが、
俺を見下すそいつの目線を受けて気づいた。
俺は、そいつに背後から蹴られたのである。
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