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第7話
「何をする貴様……」
俺は地面についた尻を上げ、咄嗟についた右手に若干痛みを感じながら立ち上がろうとした。
「ふざけんなよ!バーカ!!!」
「っ!!」
立ち上がろうとする俺に、そいつは再び蹴りを入れる。
「……なんのつもりだ……」
腹に直撃した蹴りにうずくまりながらも、俺はそいつを睨みつけながら問うた。
「別に?ただムカついたから蹴っただけ。小学校では虐められてたくせに、中学に入ってイキってるようだからな。」
「……別にイキってない。」
「黙れよ!」
再び体に走る衝撃。
「……うっ……!」
蹲る体に何度も続けられる攻撃。
口を開けたときにふと感じた鉄の味に違和感を持ち顔に手を当てると、手が赤く染まっていた。
「いやいや、なんでやり返さねーの?え?格好つけてんのか?」
俺がひたすら両手で自分の身を守っていたことが不満だったのだろうか、怒鳴るような嘲笑うような声でそいつは俺に聞く。
「……格好つけてたらこんなことにはならん。今の俺は最高に格好悪いだろう…」
「そういう態度が格好付けてるって言ってんだよ!!」
「じゃあ格好付けでも何でも良い。俺は……俺の所属する部活は、暴力沙汰を起こした途端に厳しい処分が下る。それに、本人だけでなく他の部員たちにも何かしらのペナルティが課せられるのだ…」
話す途中でゴホッと何度か咽てしまう。
この息苦しさは風邪を引いたのか、殴られたからなのか、最早分からなかった。
「俺は、そんなことは絶対にしたくない……。あの部活は、初めて俺を受け入れ、仲間として認めてくれた場所だ……。そんな奴らに迷惑をかけるような、恩を仇で返すような真似は俺は絶対にしたくない!」
最後の力を振り絞るような勢いに任せ、俺は自らの主張をした。
せっかく手に入れたものだ。
一生手にできないと諦めかけていたもの。
しかしあの場所は、あいつらは、簡単に俺の前からは消えるまい。
最近、ようやくそう思えるようになったのだ。
それなのに、こんなことで…………
俺は自分の不甲斐なさと情けなさに、気がついたら涙を流していた。
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