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23時を迎え、宿題を終えたぼくは就寝の準備を行っていた。ぼくの「一日10万回」の数値は95000回を超えていた。人間の一日の鼓動数から大体5000を引いたぐらいだろう。今日は体育の時間のマラソンこそあれ、急ぎの用事で走ることもなく、落ち着いた一日だったと考えればこんなものだろう。一秒に一回の鼓動より若干早いと考え、それを1分分で60回強から70回弱、更にそれを一時間分として、下限値3600回ぐらいと考え、上限は4300回ぐらいとだろうか。心臓の鼓動は一定ではないと考えれば大体一時間で4000回ぐらいのどんぶり勘定にしておこう。それが24時間で96000回ぐらい。大体計算は合っているし、今、ぼくの目の前に表示されている「一日10万回」の数値とも合っている。
後は落ち着いてさえいれば、ぼくの一日の鼓動数は10万回を超えることはないだろう。
「ちょっと運動してみるかな?」
ぼくは好奇心から10万回の鼓動数を超えてみたくなった。どうせ、死ぬわけがないだろうといった軽い考えだ。深夜アニメでも見ながらストレッチでもするかと思い、テレビを点けた。
〈この時間は、予定を変更して連続怪死事件のニュースを放送します〉
連続怪死事件とは穏やかじゃないな。ぼくは足を伸ばすストレッチを行いながらそのニュースに耳を傾けた。
〈夕方から今晩にかけて、連続して人が倒れていると言う通報が相次いで入り、その中にはプロのスポーツ選手が多く、警察は調査の方を……〉
プロスポーツ選手は長生き出来ないって噂に聞くけど、本当だったか。アナウンサーは次々と亡くなったプロスポーツ選手の名前を読み上げていく。スポーツはあまり見ないぼくでも知っている程のビッグネームが並んでいて驚くばかりだった。
アナウンサーは新しい原稿を受け取った。その瞬間、大きく口を開けて驚いた。そう言えば、このアナウンサーも元水泳の選手で、引退後はスポーツキャスターに抜擢されて、それからアナウンサーになった経歴の持ち主だったな。お仲間のアスリートさんでも亡くなって驚いたのだろうか。
〈し、失礼致しました。警察庁から発表がありまして、この連続怪死事件で亡くなった方のスマートフォンの中のアプリケーションの中に本日話題になっていた『一日10万回』がダウンロードされているとのことでした。そして、いずれのアプリケーションも『100000』の数値でカウンターストップした状態で……〉
アナウンサーは青ざめた顔をして震えだした。そして、ポケットからスマートフォンを出してカメラに向かって掲げて見せた。「一日10万回」のアプリケーションが立ち上がっており、99700の数を刻み、現在進行系で数字は増え続けていた。
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