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「引き出物はカタログで選んでもらうのがいいですよね。あとはドレスを決めなきゃ」
私は、式場からの帰り道、婚約者の須藤さんに話しかける。
「はい」
そう答えた須藤さんは前を向いたまま。
興味があるのかないのか、それ以前に、ちゃんと聞いてるのかどうかも怪しい生返事。
「友人にいくつかおすすめのショップを教えてもらったので、来週一緒に行きません?」
それでも私は、なんとか2人の関係性を良くしようと明るめに話しかける。
「……ドレスのことはよく分かりませんので、玲さんがお友達と行ってきてください」
……結婚する気あるの!?
私は、喉元まで出かかった言葉を飲み込む。
今年33歳になる私は、同期の女子最後の独身。
別に結婚なんて気にしてなかったけど、私1人が独身だと思うと、なんとなく焦る。
と思ってたら、先日伯母がお見合いの話を持ってきた。
35歳独身の須藤 武幸さん。
身長175㎝、ルックスはまあまあ。
真面目な公務員だから、結婚には向いてそう。
そう思って、結婚を決めたけれど……
全く会話が弾まない。
真面目なのはいいんだけど、終始無言で話を聞いてるんだか聞いてないんだか、それすら分かんない。
大体、この年になると、別にドレスを一緒に選んで欲しいなんて思わないけど、でも、結婚準備って名目のデートだと思うんだけど。
お互いのことをまだよく知らないからこそ、一緒にいろんなことを決めていきたいのに。
でも、そんなわがままを言えるほどの関係性を築けていないのも事実で……
私は、それ以上の説得を諦めて、黙ってしまった。
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