結婚願望の成れの果て

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翌週、私はドレスショップを1人で回る。 婚約者がドレス選びについて来てくれないなんて、友人にも言いたくない。 ただでさえ婚期が遅れてるんだから、せめて幸せな結婚をすると思われたい。 私は、ショップに1人で入ると、気に入ったドレスを2〜3着ほど来て写真を撮らせてもらい、別の店へと移動する。 けれど、どこも店員さんの視線が冷たい。 1人でドレスを試着して写真を撮るなんて、冷やかしだと思われてるのかもしれない。 ちゃんとお客さんなのにな…… 結婚するのに、なんでこんなに嫌な気分にならなきゃいけないの? これ、マリッジブルーとは違うよね? 私はそんなことを思いながら、3件目のショップへと入った。 ここはオリジナルのドレスを制作しているショップで、イチオシだってトモコが言ってた。 カランカランッとカウベルが来店を知らせてくれる。 「いらっしゃいませ」 おそらく同世代だと思われる女性店員がにこやかに出迎えてくれる。 「ウェディングドレスを見せていただきたいんですが」 私は、今日3回目となるこの台詞を口にする。 「ありがとうございます。お式の日取りはお決まりですか?」 女性は顧客情報を記入するバインダーとボールペンを手に質問を始める。 すると、その女性は、ふと気になったかのように顔を上げた。 「ご新郎さまは、今日はご一緒ではないんですか?」 ほら来た、この質問。 いちいちこれを説明するのが嫌なのよ。 「今日は仕事で来られないので、とりあえず私だけ来ました」 めんどくさくなった私はその場しのぎの嘘をつく。 「お仕事じゃ仕方ありませんよね」 女性は笑顔を崩さず質問を続ける。 「うちは購入もレンタルもできますが、どちらをご希望ですか?」 うん、トモコも言ってた。 「レンタルで」 買ったらその後の保管が大変。 レンタルの方が気楽でいい。 「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」 質問を終えると、その奥の部屋へと通された。
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