1・雨、キミ去る。

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 “フラワーショップ・レイン“  実家は生花店を営んでいる。傘と雫のマークの入った看板に、ガーベラが笑顔で華を添える。  駅前のお店の入り口は広く屋根が掛かっていて、雨宿りをする人達が集まってきて賑やかになるから、〝雨には感謝〟と言う事で店の名前はレイン。安易だけど、あたしは気に入っている。 「今日はお花よく出るね」 「そうね、でも、悲しい方のお花よ」 「え……あぁ、」  華やかなイメージがある生花は、贈り物やお祝いなどの人を喜ばせるための物だと思っていたけど、別の意味での送り花がある。大切な人や身近な人が亡くなった時に贈るお花。  あたしは、母の手伝いをしながら送り主の名前を見た。  “永田 孝弥(ながた たかや)“ 「あれ、これって……」 「何、知り合い?」 「もしかしたら、高校の同級生かもしれない。誰が亡くなったんだろう」 「詩乃より少し上くらいじゃなかったかしら。昨日の新聞に載ってたじゃない」 「新聞、見てない」 「ほら、そこにあるわよ」  そう言って母は空いていない両手の代わりに、奥のテーブルの上に視線を向ける。あたしはすぐさまそれを手に取って記事を探した。
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