1・雨、キミ去る。

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 昨日の夜からジトジトと降り続ける湿度の高い雨は、朝まで降り止むこと無くまだ地面を濡らしていた。  空は重苦しい灰色をしていて、気持ちまでもがどんよりと沈み込むような気がして、思わずため息が漏れる。  朝早くからバタバタと忙しなく動いている母の姿に、あたしはまだ眠い目を擦りながら「おはよう」と挨拶をする。 「あ、詩乃(しの)。おはよう」 「どうしたの? 仕事?」  冷蔵庫からミネラルウォータを取り出してグラスに注ぎながら、仕事でいつも着けているエプロンをしている母に聞いた。 「そうなの。詩乃も着替えて手伝ってちょうだい」 「あー、うん。分かった」  あたしは焦る母とは正反対にのんびりと答えて、グラスを流しで洗うと一旦部屋に戻った。  まだ開けていなかったカーテンを開けて、どんよりとした空を眺めると、気分までもが憂鬱になってきそうだ。  美容師を志して東京のヘアサロンに就職したものの、都会の環境と仕事と練習の多忙さに心が折れ、仕事ではミスばかりを続けてしまっていた。  その挙句、三年付き合った彼氏から別れを切り出されたあたしは、どうしようもなく落ち込んでしまっていて、逃げるように田舎の実家に帰って来てしまっていた。
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