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患者の肖像①
向かいの椅子に戻った御都部は、
「まぁ──見てくれないか。これが、患者が怪我をする前の……元の顔で──」
封筒から一枚を抜き出し、そっとテーブルの上へ置いた。
「どうだい。大層美しい顔だろう?」
自慢でもするようなその口調に僕は御都部が『随分入れ揚げている娘』を感じた。
手に取ったそれは、高校生と言った年頃の少女を写したポートレート写真で、些か堅い表情を見せてはいるが、大変な美少女である事はひと目で判った。
頷いた僕が写真から顔を上げると、身を乗り出した御都部に手元を覗き込まれていて、思わず大袈裟に仰け反ってしまった。
「──いや、失敬」
クスリ──と小さく嗤われた事に、揶揄われているような厭な気持ちが一気に胸に広がり、自分の口がへの字に曲がるのを感じた。
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