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首を振った僕は、身体を支えようとテーブルに手を付いたが、どうにも力が入らなかった。
「僕と嵩祢と君と……きっと巧く遣って行けるよ、きっと──」
飲み干した珈琲の、あの苦味が胸を支配した。
崩れ堕ちるように視界が斜めに傾げると、視線の先にあの扉が見えた。
静かに開いた扉の前に立っていたのは、きっとあの少年で……口元には笑みが浮かべられていた。
その美しい顔に、僕は闇を見た。
左目の辺り、ぽっかり空いた空洞に、凝り固まった恐ろしい闇を──。
逃れようと藻掻いたが、身体はすっかり麻痺してしまったようで、傍らの御都部の腕に堕ちると観念して目を閉じ、意識を手放した僕は柔らかい闇に堕ちて行った。
・おわり・
スター☆で励まして頂いたり、本棚にまで加えて頂けて嬉しかったです。有難うございます(*'▽')これからもよろしくお願いいたします。久遠 耽拝。
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