飛ぶように駆けてゆけ

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 途中棄権した私はすぐに競技場の医務室で応急処置を受け、駆け付けた父の車で近くの病院まで連れて行ってもらった。  医師の診断は全治一ヶ月。この肉離れで私の青春は完全に終わってしまった。  この日の為につらいトレーニングに耐え、時に怪我を押して練習もしてきた。励ましてくれた仲間や先生にも申し訳ない。翌日に出る筈だったリレーも当然出場できない。すべてが水の泡だ。  父の運転する車が見慣れた交差点に入っていく。もうすぐ家に着くと思うと、私の気分はますます重くなった。 —今日だけは、彼に会いたくないな  私は、ついそんな事を考えてしまう。  同じマンションで育った幼馴染の彼の事を。  私より後で陸上競技を始めて、私と同じ400メートルであっという間に私を抜いていったライバルの事を。  その彼に、今のこの姿を見られるのはどうしても嫌だった。
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