飛ぶように駆けてゆけ

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 彼とは同い年で、幼稚園から中学校まで一緒だけど高校はそれぞれ別の公立高校に進学した。なので高校に進学した直後は自然と没交渉気味だった。  ところが、彼も高校で陸上を始めてからはちょくちょく試合会場で顔を合わすようになった。  中学時代はずっと帰宅部だった彼だけど、きっと素養があったとんだと思う。いや、それ以上に人一倍努力もしていたに違いない。試合の度に記録を伸ばしていく彼を見て、私は自分の慢心に喝を入れた。私が中学三年の時に全国大会に出場したという事実は過去の栄光に過ぎない。うかうかしていると見る間に抜かれてしまうぞと、彼の存在を起爆剤にして練習に励んだ。 —絶対、負けない。  きっと彼よりも、一つでも多く勝って、少しでも上位の大会まで勝ち残るんだ。先に陸上競技を始めた者の意地もあって、私は密かなライバル心に燃えた。  そして私も彼も、同じ400メートルという種目でインターハイを狙える程に成長した。  ・・はずだったのに。
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